朝日小学生新聞「天声こども語・天声人語」の活用法

『朝日小学生新聞』には天声人語の子供版である「天声こども語」「よみとき 天声人語」の2つの天声人語コーナーがあります。(水・日曜が「天声こども語」、土曜が「よみとき 天声人語」の掲載日)。

天声人語といえば朝日新聞の代表的コラムであり、小学生新聞・中高生新聞では最大の学習ツールとして利用されています。

天声人語には「読解力」「論理的思考力」「文章力」の向上効果があるといわれています。そのため、国語力アップや小論文対策として、高校では朝学に導入しているところも多いようです。もちろん、「天声こども語」と「よみとき 天声人語」にも同じ効果を期待することができます。

それでは、『朝日小学生新聞』の「天声こども語」と「よみとき 天声人語」は実際にどのように活用していけばよいのでしょうか。その活用法の一例をご紹介します。

「天声こども語」の活用法

出典:朝日小学生新聞公式サイト

天声こども語の活用法には主に次の5つが挙げられます。

  • ノート作り
  • 音読する
  • 書き写し
  • 感想・疑問を書く
  • 要約文を書く

ノート作り

出典:朝日小学生新聞公式サイト

『朝日小学生新聞』では「天声人語」をスクラップ&書き写しするために、専用の「活用ノート」が販売されていますが、もちろん普通のノートでも大丈夫です。

専用の活用ノートには、「紙面を張り付ける欄」「書き写す欄」「感想」を書く欄が用意されています。自前のノートを用意する場合にも、同じようなスペースを用意するようにしましょう。

なお、まだ天声人語の学習が難しそうであったり、本人のモチベーションが追い付かなかったりする場合も考えられます。その場合、初段階は切り取った記事をひたすらノートに貼っていくだけでも大丈夫です。まずは「作業」を習慣化させるところか始めましょう。もう少し余裕がありそうなら、気になるところに赤線を引かせたり、一言で構わないので感想を書かせたりするのも効果的です。そのような作業に慣れてきたら、頃合いを見て次のステップに進むようにしましょう。

音読

「天声こども語」を声に出して読むようにしましょう。大きな声を出せる環境であれば、ある程度お腹に力を入れて発生させると、より効果がみられるそうです。

音読はなるべくお母さんも一緒に聞いてあげるようにしましょう。ちょうど、「本読み」の宿題と同じように考えると良いかもしれません。

音読を終えたら、内容を確認し合ったり、口頭で「感想」や「疑問」を訊ねたりします。「疑問」に対してはその場ですぐに議論するようにしましょう。また、面白そうな「感想」はノートに書くように促しましょう。自分の考えたことや口に出した言葉を文章化する練習にもなります。

書き写し

「天声こども語」を切り抜いてノートに貼り、その下にそっくりそのまま文章を書き写す作業です。

「書き写し」は言葉による「表現力(文章力)」を鍛えるための最高の練習になります。作文の練習は、良質の文章を「真似る」=「書き写す」ところからはじまる、といわれます。小学生にもなると頭の中で考えたことを話し言葉に変換する能力はそこそこ備わっていますが、書き言葉(文章)で表現する能力はほとんどありません。そういう機会があまりないからです。

しかし、今後の受験では文章力・表現力を試される機会は間違いなく増えていきますし、社会に出て、「仕事のできる人間」になりたいのであれば、その力が必須になります。

そのためにも、まずは「天声こども語」という良質の文章の「書き写し」からはじめてみましょう。それを繰り返すうちに、少しずつ日本語の構造を理解し、文章を作るコツをつかんでいくはずです。

感想・疑問を書く

記事を読んだら、ノートに感想・疑問を書くようにします。感想は長文でなくても構いません。はじめのうちは一言でもOKです。私は○○○○と思いました、で十分です。大切なことは、「自分がどのようなことを感じたのか」ということを自分自身で発見することにあります。そのため、最初はお母さんが子供の感想を引き出してあげると良いでしょう。記事を読んで、「どう思った?」と質問したり、感想が分からない場合は、具体的に「この部分についてどう思った?」と訊いてあげたりすると、何かしら自分の思いや考えを応えてくれると思います。そして、その思いや考えが「感想」なのだと教えてあげるのです。

すると子供たちは、自分の「感想」を感覚的に理解し、次第にそれを引っ張り出せるようになります。

まずはお母さんと一緒に口頭で感想を引き出し、それを文章でメモしておく。そんな感覚で進めてみると、スムーズにいくはずです。

ちなみに、もし「疑問」があればそれも書き留めておくようにしましょう。疑問はその場で議論し、答えが見つかればそれもメモしておきます。答えが見つからなくても、機会を見つけて親子で探求してみるのも面白いと思います。

要約文を書く

「天声こども語」は374字で書かれているため、200字程度(160~200字)の要約文にまとめ、ノートに書きます。要約した文章は、できるかぎりお母さんが確認してあげるようにしましょう。
※要約文のほかに、200字程度の感想文を書くのも非常に有効です。中・高の朝学でよく取り組みがなされています。

「要約文の作成」は、天声人語活用法の最終段階です。上記の「ノードづくり」「音読」「書き写し」がなかば「作業」であるのに対し、要約文は自分の頭でよく考えなければ書き出すことができません。もっと厳密にいえば、①文章を正しく読解し、②頭の中で要点を整理し、③それを文章として表現する、という3つの能力が必要になります。

要約文をスラスラかける子供は、おそらく一生涯勉強に困ることはないはずです。それほど難易度が高く、同時に学習効果の高い勉強法といえます。

要約文は最初からうまく書けませんし、まったく書き出せないとしても不思議はありません。小学生であれば、要約文を書く機会なんてほとんどないはずです。初体験であっても不思議はありません。そのため、子供の学力に応じて対応を心がけます。

まったく太刀打ちできそうもなければ、まずはノート作り~書き写しまでの作業になれるところから始めます。それだけでも十分な効果を得られますし、むしろそれらの作業の積み重ねを経て、要約文を書けるようになるのです。

そして要約文に取り組むときは、まずは親子で一緒に書いてみるところから始めましょう。200字の要約文を書くことは、親にとっても簡単ではありません。コツは「要点」を見抜くこと。文章をばらばらにして考えるのではなく、文章の「流れ」から見つけ出そうとすると、意外と簡単に見つかるはずです。流れが変わる=要点が変わる、ということですから。要点はおそらく3~4つになると思います。それらの要点を最低限意味のつながるように肉付けして並べていくと、ちょうど良い要約文になるはずです。

慣れてきたら、1人でやらせるようにしましょう。

いずれの形にしても、前述のように要約文は必ず読み返してください。要約文がうまく書けているかどうかの判断は難しいところではあります。ただ、要約文とは「最大公約数」のようなものです。記事で表現したいポイントがすべて表現されていなければ、「要約」しているとはいえません。何かが足りない気がする・・・と感じたら、もう一度要点と要約文を照らし合わせてみましょう。

「よみとき 天声人語」の活用法

出典:朝日小学生新聞公式サイト

ノート作り~要約文

「よみとき 天声人語」は、本家の「天声人語」+解説・宿題を掲載したコーナーです。そのため、当然「天声こども語」に比べて文章が難しく、難易度は高めです。

とはいえ、基本的な活用法は「天声こども語」と同じです。「ノート作り」「音読する」「書き写し」「感想・疑問を書く」「要約文を書く」。これだけで十分でしょう。

ただ、「よみとき 天声人語」には次に紹介する「宿題」の要素があるため、余裕のある子はそれに挑戦してみるのも良いでしょう(逆に「宿題だけに取り組む」というのもアリだと思います)。

「宿題」に挑戦する

「よみとき 天声人語」は「出題編」と「発表編」に分かれています。出題編には「宿題」と称した問題文が掲載されます。問題文に対する回答は朝日新聞に投稿できる仕組みになっており、「発表編」で読者の答えを発表したり、記者の解説が掲載されたりします。

出題される問題は3問。ただ、問題といってもいわゆる「正解」のあるものではありません。記事の内容をもとに、自己体験や考えを聞き出すものが2問。タイトルをつけてみる、という問題が1問。

ようするに、完全に発想力・思考力を訓練するコーナーといえるでしょう。日本の教育現場で「答えのない問題」に挑戦する機会はほとんどありませんから、ある意味貴重なチャンスでもあります。

答えがないので、発想は自由です。自分の考えをノートに書き留め、発表編で他の読者の回答と照らし合わせてみます。そこから新たに考えることがあれば、それもノートにメモしておきましょう。一人ではモチベーションが上がらないかもしれないので、親子で取り組むと毎週の楽しみが増えるかもしれません。

ちなみに、3問目の「見出しをつけよう」という問題は、記事にタイトルをつける作業になるわけですが、これはけっこう重要です。井上ひさし氏はタイトルを付けた段階で作文の3分の1は完了している、と述べていました。記事全体の内容を正確に把握し、もっとも重要な点を洗い出さなければ、ふさわしいタイトルを付けられないからです。そういった意味では「要約文」をさらに短い文字数でまとめる、といった作業になるかもしれません。

慣れないうちは発表編で取り上げられた回答例を見ながら、「真似てみる」のがいいでしょう。文章もタイトルも、まずは真似るところから。

朝日小学生新聞の詳細はこちら
せと

ライター瀬戸 誠(せと まこと)

学習塾に勤務する教育ライター。担当教科は国語。文章力の大切さを説き、作文練習を通じた生徒の学力アップに成功している。趣味はヨーロッパ旅行。

朝日小学生新聞のおすすめコラム

もっと見る

子供新聞徹底解説