子供新聞・小学生新聞を読むと落ち着いた子供になる?

「子供新聞を読むと落ち着いた子供になる」という意見があります。ずいぶんと大げさなことをいうものだと疑いたくなるかもしれませんが、あながち間違いでもありません。「子供新聞」と限定してしまうと胡散臭くなってしまうのであって、「読書」に変えてみると、なかなか興味深い意見になるはずです。

たしかに、木陰のベンチで本を読んでいる少年が、学校では手の付けられない問題児だとは思えませんよね(極端なイメージではありますが…)。同じように、口より先に手を出してしまう少年が読書家であるというイメージもまた、想像するのが難しいかもしれません。

では仮に、このイメージが正しいとしましょう。つまり多くの場合、「本や新聞をよく読む子供は比較的落ち着いている傾向にある」「本や新聞をまったく読まない子供は比較的荒れている傾向がある」というイメージです。

もしこのイメージが正しいとする場合、なぜ本を読む子供は精神的な落ち着きを見せるのでしょうか。

ここで、ひとつの研究をご紹介したいと思います。それはイギリスで行われた、家庭のコミュニケーションを調査したものでした。詳細は省きますが、その調査によると、「コミュニケーションの方法」により家庭は大きく二分されることがわかりました。

1つは家族間のコミュニケーションがきちんとした「文章」で行われる家庭、もう1つは「単語のみ」で行われる家庭です。そして後者の家庭で育った子供は、言語能力の発達に遅れがみられ、情緒が不安定になりやすい、暴力的になりやすい、といったものでした。

日頃から言葉を使わないと、言語能力が発達せず、落ち着かない子供になってしまうということです。ではなぜ、言語能力が発達しないと、子供は精神的に落ち着かなくなってしまうのでしょうか。

「言葉」が子供の心を安定させる

それは、彼らが「言葉を使って考えられない」からです。物事を考えるためには、そして理解するためには「言葉」が必要です。あれは何だろう、どうして彼はそんなことを言ったのだろう…もちろん、自分自身のこともそうです。僕は今何を思っているのか、どうして嬉しいのか、どうして腹が立つのか、そういったこともすべて、言葉によって理解しなければなりません。

しかし、言葉の力が発達していない子供たちは(大人でも同じことが言えますが)、自分の思考を整理できず、まるで洪水のように沸き上がる正体不明の感情に溺れてしまうのです。その結果、自分自身をコントロールできずにキレやすくなったり、また他人の気持ちも理解できないので、人を傷つけることに対する抵抗感も薄れたりしてします。

まったく「口」より先に「手」がでるとはよくいったもので、「口」とはつまり言葉のこと。自分の外側だけでなく、自分の内側に対しても「言葉」がなければ「傷つける」ほかないのです。

なぜ子供新聞を読むと落ち着いた子供になるのか

少し脱線してしまったかもしれませんが、ようするに「言語能力」と「子供の精神」は密接に結びついていることが分かります。前述の研究の例は、その「言語能力」を育む一例として「家族間のコミュニケーション」が挙げられましたが、もちろん「言語能力」を育てる方法はそれだけではありません。「読書」がありますよね(「新聞」も読書のひとつです)。

読書と言語能力が密接にかかわっていることはすでに分かっています。そして言語能力の発達した子供は、自分の考えや人の考えを「言葉」によって整理し、理解することができます。嬉しい、辛い、悲しい、腹が立つ、といった感情と正しく向き合うことができるため、溺れずに冷静さを保つことができるのです。

また、言葉を操れる子供は、感情を言葉で「表現」することもできます。愚痴をいうとスッキリといいますが、それと同じ。子供たちが辛い経験や腹の立つできごとに遭遇した時、もし彼らが家に帰ってきて、お父さん・お母さんにその「感情」を「話す」ことができれば、彼らのわだかまりはそこで解消されます。言葉によって解消されるのですから、わざわざ「手」を出す必要はありません。

このように、言語能力の発達した子供は、安定した精神状態を維持しやすくなることが分かります。そして言語能力が未発達の子供は、これとまったく逆の現象が起きるわけです。

これらの点を踏まえると、「子供新聞を読むと落ち着いた子供になる」という意見が、あながち間違いでないことが分かりますよね。新聞に限らず、たくさん読書をすること、そして同じくらい家族とコミュニケーションをとることが、「落ち着いた子供」を育てる一番の秘訣なのです。

あいだ

ライター相田 浩二(あいだ こうじ)

個人塾の経営者。「受験テクニック」に頼らない考える勉強法をテーマに、子どもたちへの教育はもちろん、講演会も開催。家族構成は妻と12歳の娘と猫1匹。

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