子供新聞・小学生新聞の効果的な活用法
子供新聞は、もちろん毎日読むだけで十分な学習効果をもたらしてくれます。でも、ほんの少し活用してみることで、その効果を何倍にも増やすことができるのです。こちらの記事では、「子供新聞の活用法」をご紹介します。
スクラップノートづくり
子供新聞の活用法といえば「スクラップノートづくり」です。新聞を読みながら、興味を持った記事を積極的に切り抜き、ノートに張り付けて保存します。
子供にとって、あれこれ難しいことを考えるよりも、こういった一種の「作業」のほうが楽しんで取り組むことができます。「子供新聞=新聞を切り抜いてノートに張り付けるもの」、という認識でもはじめのうちは構わないでしょう。特に子供新聞にもともと乗り気でない子には、この方法がベストです。
また、そういった意味ではいきなり新聞を読んで興味のある記事を見つけることも簡単ではありません。そのため、もし記事に興味を持つのが難しいようであれば、初段階は切り抜く記事を決めておくのもアリです。
分かりやすいものでいえば、『読売KODOMO新聞』の「おしえて!コナン時事ワード」が挙げられます。こちらのコーナーは切り抜くことが前提になっており、紙面に切り取り線すらついています。また、『朝日小学生新聞』であれば天声人語シリーズもオススメです。
もしくは、親御さんが一緒に読みながら子供の反応をうかがい、少しでも興味を持った記事について、「この記事を切り抜いてノートに貼ってみようか」と促してあげるのも良いでしょう。
子供たちはこういった作業を繰り返すうちに、だんだんと自分の興味を認識していきます。あるいは、「興味を持つ」とはどういうことなのか、興味を持った時の自分の心の動きを確認していくのです。そうなると、自分自身の興味や好奇心といったものに敏感になってくれるはずです。
作業に慣れてきたら、決められた記事以外にも、自分の気になる記事をどんどんスクラップさせましょう。そしてノートに貼る時、記事の中で気になった文章に赤線を引いておくと、あとで読み返したときに「自分の興味」を思い出しやすくなります。さらに上級者の場合は、感想や記事のポイントを書き込んでおくとなお効果的です(これができる子どもは「授業ノートまとめ」もできるはずです)。
「興味のある記事」をみつけられるようになったら、それは子供たちが能動的・積極的に紙面に向き合っている証拠です。つまり、スクラップノートは子供たちが一生懸命考えて、勉強した「成果」ということになります。そんなノートが徐々に厚くなり、そして何冊も増えていったら・・・子供だけじゃなく、いやむしろ親のほうがワクワクしちゃいますよね。
だからこそ、子供が記事を切り抜いてノートに張り付けたときは、目一杯褒めてあげましょう。ノートが厚くなってきたり、増えたりしたときも同じように評価をしてあげます。子どもは親に褒められるのが何よりも嬉しいものです。そして、その嬉しさを支えに勉強に取り組んでいくのです。
ときどき一緒に読み返して親子で内容を確認し合うのも楽しいかもしれませんね。
音読する
これは読書全般に言えることですが、「音読」効果は素晴らしいの一言に尽きます。一昔前に斉藤孝さんの音読シリーズが大流行しましたよね。またトロイア・ミケーネ文明の発見者であり、18ヵ国語を話すことができたという語学の天才シュリーマンも、「言語習得の最も効率の良い方法は、その国の言葉で書かれた名著をバカでかい声で音読することだ」と言っていたそうです。子供新聞が名著かどうかはさておき、いずれにせよ音読が言語学習に大きな役割を果たしてくれることは確かです。
大人にとってはなかなかピンと来ないかもしれませんが、子供はまだ、日本語というものを正確に把握していません。家族や友達と流暢に会話をすることはできます。話し言葉はなんとなく理解できるのです。ところが文字で書かれた文章になると、途端に分からなくなってしまうのです。つまり、言語発達レベルでいうと、話し言葉は分かるけれど、書き言葉は分からない、といったような中途半端なところにいるのです。
そこで役立つのが「音読」です。音読とはつまり、「書き言葉を声に出して読む」という行為です。はじめのうちは、声に出して読んだところで、読み方はたどたどしいでしょうし、内容も全然頭に入ってこないと思います。でも、それで良いのです。子供は「正しい日本語」を読みながら、少しずつ日本語の構造を感覚的に理解していくのです。
日本語の構造を理解できるようになると、音読が少しずつスムーズになっていくはずです。それは音読自体に慣れてきているということもありますが、徐々に意味の区切りを理解してくるからだといわれています。そこまでくれば、「読む力」はかなり身についているはずです。
もちろん、音読の効果は「インプット」だけにとどまらず、日本語を「表現」する際の「アウトプット」にも影響を与えてくれます。文章が上手になったり、普段の会話にすら綺麗な日本語を見つけられるようになったりするかもしれません。それはちょうど、いまひとつ何を言っているのかよく分からなかった幼児が、成長とともに誰にでも通じる日本語を話し出すのと同じ現象です。美しく正確な言葉を話す人は、大人になってからも多くの場面で得をするはずですよ。
書き写し
子供新聞活用法の中で最も効果を発揮してくれるのが「書き写し」です。書き写しとは、文章による「表現力」または「書く力」を鍛えるための訓練です。そして同時に、「表現力」や「書く力」を身につける上でもっとも効率の良い方法といわれています。
やり方はいたって単純で、気になる記事を見つけたら、それをノートに書き写すだけです。「音読」の書くバージョンですね。
ちなみに、書き写しの王道といえばやはり「天声人語」。『朝日小学生新聞』では専用の「活用ノート」を販売しており、天声人語の子供版「天声こども語」を書き写せるようになっています(ちなみに大人版ノートもあります)。中学受験生の多くは、天声人語の書き写しを実践しているようですね。
※参考:「天声こども語・天声人語の活用法」
子供はしゃべったり読んだりすることはできますが、「書く」という行為は大の苦手です。まして「自分の考えを表現する」ということになれば未知の領域。そういった表現ができるようになるためには、(音読の時と同様)お手本となる文章を実際に真似て書いてみることで、「正しい日本語の書き方」を感覚的に身につけていくしかありません。
たくさんの(質の良い)文章を書き写すたびに、子供たちの脳は少しずつ「型」を習得していきます。そして自ら文章を書こうとするとき、自然とその「型」をもとに言葉を組み立てようとします。もとの「型」が良質であればあるほど、良い文章を書きやすくなるというわけですね。書き写しを数ヵ月・数年もやった後には、子供たちの表現力はきっと「大人顔負け」のものになっているはずです。
ところで、ここからは完全に余談ですが・・・。ある経済誌では、この先AIに取って代わられることがなく、組織にとってもっとも重要な役割を果たしてくれるのは「文章を書ける人」である、と紹介していたことがありました。技術や知識は機械でカバーできるかもしれないけれど、「言葉によって表現する」能力だけは、人間のほかに持つことができないということです。
この表現力は日本人に足りないとされる能力の一つであり、文科省もその重要性を鑑みて、思考力・判断力に加えて「表現力」に重点を置くことを、(たとえいつものように口だけになろうとも)今後の教育方針として改めて表明しました。今後のあらゆる試験においても、表現力を問う問題が増えていくことは間違いないでしょう。
そして前述のように、「表現力」や「書く力」を鍛える上でもっとも効率の良い方法が「書き写し」です。実際に、文筆を生業とする多くの人が、文章の訓練として「書き写し」を実践しており、どんな文章を書きましたか、と問えば、「私は○○○○さんのエッセイをよく真似て書きました」などと答えが返ってくるものです。
自分の思いや考えを正確な日本語で伝えられる能力は、受験に限らず、社会に出た後も重要な役割を果たしてくれます。会社勤めをしてみると、上位数パーセントの「優秀な人たち」は、得てしてそういう能力を持った人であることがよく分かるものです。
話し合う
子供新聞を読んだ後は、もしくは読んでいる途中であっても、新聞に書かれている記事について親子で話し合うようにしましょう。子供は新しい知識を獲得すると、嬉しくて親に話したがるものです。子どもが新聞の話題を持ちかけたら、しっかりと耳を傾け、褒めてあげたり、質問したり、質問をされたら答えたりするようにします。もし子供が何も話さないようであれば、こちらから「どんなことが書いてあったの?」と訊いてあげましょう。
子供は親との話し合いを通じて、さらに理解を深めたり、興味を抱いたり、あるいは話し合い自体が表現の練習になったりします。そういった意味では、やはりできる限り親子で一緒に読むことが、話し合いの機会を促してくれるかもしれませんね。
また、話し合いとはつまり親子のコミュニケーションでもあります。会話を通じて、子供は親からの愛情を受け取ります。子供新聞をコミュニケーションツールとして活用することで、学習効果を高めると同時に、親子関係の向上にも役立てられるかもしれませんね。
ライター瀬戸 誠(せと まこと)
学習塾に勤務する教育ライター。担当教科は国語。文章力の大切さを説き、作文練習を通じた生徒の学力アップに成功している。趣味はヨーロッパ旅行。